INTERVIEW

■2019年8月に、それまでバンドで表現したきたサウンドのイメージをガラッと変えた『インドア』をリリースし、それを経て1年半ぶりに『アウトドア』というアルバムがリリースされます。『インドア』の制作後にメンバー全員が大学を卒業し、大阪から上京、さてこれから音楽活動を活発化させていくというタイミングで、新型コロナウイルス感染症の拡大によって自粛を強いられたという2020年だったと思うのですが、まず昨年はどういうふうに過ごしていましたか?

四方颯人(Vo.)「おっしゃる通り、上京して、これからライブとか音楽活動をどんどんしていこうっていうタイミングやったんですよね。でも、想像と違ってなんか家でゆっくりになってるなぁって思いながら、ライブじゃないことでやれることを探していかないとって結構焦ってました」

吉見和起(Gt.)「去年、ライブは2月に1本、8月にワンマン1本とライブ1本、その後にイベント2本くらいで。時間がある分、やれることはやりつつって感じやったんですけど、やっぱり音楽しよう!って上京したのに何もできないことで、凄く追い込まれる状況でしたね。でもそれと同時に、楽器の練習やったり、楽曲制作の勉強ができた1年やったなと思うし、それは今作に活きたなと思うんですよ。練習でも何でもやるって決めたらみんなやってたし、何やかんや止まりはしない1年やったと思います」

■配信でコンスタントにリリースもされてましたよね。『インドア』は四方さん発信で作られた作品で、これまでバンドで表現したことのない音を構築することにメンバー4人は当時戸惑いもあったんじゃないかと思うんですけど、自粛期間で4人がそれぞれSoundCloudに『インドア』のリミックスを上げていたり、今作の自由度の高い楽曲を聴くと、各々が『インドア』で表現したものを自分の中にしっかり落とし込んで、今作でのアプローチやアイディアに繋げることができたんじゃないかなと思って。

吉見「『インドア』を制作していた時は、これまで自分が触れたことのない音ということもあって、自分にどういうアプローチができるかがわからなくて戸惑ったところはありましたね。でも、僕自身は『インドア』に対して後ろ向きな気持ちはなくて。だから、『インドア』の後に配信した“街の中で”、“セゾン”では『インドア』からちょっとレベルアップした感じにできたなと個人的には思ってます」

■古谷さんは『インドア』以降、ドラムはほとんど打ち込みでされていると思うんですけど、『アウトドア』では生感のある音も増えましたよね。

古谷「今回も全部打ち込みではあるんですけどね」

■今回も一切叩いてないんですか?

古谷駿(Dr.)「そうなんですよ。全部打ち込みですね。配信シングルで先に出た4曲、“WAV”、“Futura”、“FIVE”、“Surfing”は僕が打ち込み考えた部分が多いんですけど、他のアルバム曲はアレンジャーの人もがっつり関わってくれてバチバチの感じになってます。でも、ドラムを叩いてレコーディングしたいっていう気持ちもありましたけどね(笑)」

吉見「“街の中で”は電子ドラムを叩いて、それを打ち込み化してなかったっけ?」

古谷「そのやり方は『インドア』ではやったけど、『アウトドア』ではやってないな。でも、ベロシティ(ざっくり言えばDTMにおける打ち込みの音の強弱。強弱によって音量はもちろん音色も変わる)を細かく変えて、リアルに叩いてる感じにしようっていうのは心掛けてました」

四方「ドラムが全曲打ち込みっていうのも、そもそもコロナでスタジオに入れなかったっていうのは大きいかもな」

古谷「そうね。“セゾン”の次からコロナによる自粛期間になったっていうのもあって、制作体制がちょっと変わったんですよね」

吉見「リモート制作になったり、レコーディングの時は密にならないようにボーカルだけスタジオで録るようにしたり。前までやったら5人でスタジオに行ってたんですけど、それも緊急事態宣言以降からはできなくて。ボーカル録りまでに楽器陣はリモートやったり打ち込みやったりで全部揃えるようにしてました。だからドラムで言えばレコーディングの時は実機一切触ってないのか」

■制作体制も含め、コロナの影響によって当初想像していた作品のまとまり方とはまた違うものになったのではないかと思ったんですけど、実際はどうでしたか?

四方「それこそ上京してライブもめちゃくちゃやるつもりやったんで、ライブで映えるような曲をたくさん作って明るい感じで打ち出していけたらっていう気持ちではいたんですけど、こういう状況になって、それはそれで時代の空気感とずれるなって。でも、『インドア2』みたいなものを作るのも自分の中では嫌だったというか、『インドア』が内省のアルバムだったから、それとは対比構造にしたいと思って『アウトドア』っていうタイトルを仮でつけてたんですよ。なので、今思うと自分のやりたいことと時代の空気感のバランスを取って上手いこと作れたかなとは思ってて」

■確かに、言葉には時代が反映されているようなシニカルなものもありますが、サウンドは開けた印象の曲が多いですよね。今回の制作ではメンバーに委ねてる部分も多かったんですか?

四方「そうですね。曲にもよりますけど、全体を通してデモ段階で完結する割合は低くなったかなと思います。やっぱりバンドミュージックなんで、できるだけメンバーの意図を取り入れたいって改めて思ったし、『インドア』の時に自分ができる限界もわかったというか、ここは任せたほうが上手いことやってくれるっていうのと、ここは俺が折れたら変な感じになるっていうラインもわかってきてたんで、割と思い切って人に任せたり頼ることは増えました」

■そこはメンバーの皆さんも感じてたんですか?

吉見・武志綜真(Ba.)「めちゃくちゃ感じてました」

吉見「けど、四方が折れない部分もまだ残ってて。デモをもらって、僕のほうから『こういうふうにしてみたんやけど、どう?』って言ったら、『それはなし!』みたいな強い口調で来て、『了解……』みたいな」

四方「どれ、それ(笑)」

吉見「何やったかは忘れた(笑)。でも逆に任せてもらえるものもあって、“ただいま”とかは『これでどう?』ってメンバーLINEに上げたら、『いい感じそうやしそのまま任すわ』っていう。でも、『インドア』の時ってほんとにそういうことはなかったので――なかったというか、そもそもアプローチの仕方をわかってなかったんで、今回はコロナによる影響もありきで力もつけて、四方もある程度任せてみようって思ってくれたので、お互いにいいバランス感は見つけられたかなって思います」

武志「四方が僕らの声を聞いてくれるようになったっていうよりは、どうしたらいいかっていうのを僕自身がわかったっていうほうが大きいかなと思ってて。自粛期間でベースの練習をする中で、自分がベーシストとしてヤジコで何ができるのかっていうのをよく考えたんですよ。“街の中で”と“セゾン”は自粛期間を経ていないんで、まだこれでいいのかわからないっていう気持ちのまま作ってたんですけど、“Surfing”を作った時は、自分にできることは何かを考えた上でアプローチしたので、何か掴めた感じがあって。僕はやっぱり楽譜的な面白さしかベースラインには求めないなっていうのも改めて思いました」

四方「全部振り切ってたもんな(笑)」

武志「うん(笑)。僕はいかにメロディックなベースラインを作るかっていうところに重点を置いてやってましたね。『インドア』の時はそれがあんまりできなかったっていうのもあるし、できたとしてもあんまやらんほうがいいんかなっていう空気感もあったんで」

■“Surfing”はベースがめちゃくちゃ歌ってますよね。

吉見「“Surfing”は関わってくれてるエンジニアの人がみんな『このベース最高っすね!』って言ってたよな」

武志「でも最初ボツになりかけたんですよ(笑)。うるさいからもうちょっと落ち着いたのちょうだいって言われたんですよね」

四方「コードがおかしかったっていうのもあったけど」

吉見「でも、なんかいつの間にかバランス取れてなかった?」

四方「いや、というか武志が『絶対これがいい!』っていうからOKって言った(笑)」

吉見「はははは。でもそういうことも『インドア』の時では絶対なかったよな」

■榎本さんはどうですか? 『インドア』に比べるとアイディア出しが活発だったなとか、コミュニケーションが円滑だった印象はあります?

榎本陸(Gt.)「うーん……何ですかねぇ……俺は何でも屋というか、サイケデリックパフォーマーなんで」

全員「(笑)」

榎本「ギターも2本ある必要はないし、何でも言ってくれたらやるよっていう感じでしたね」

吉見「榎本はたぶん一番一般リスナーって言ったら語弊があるかもしれないんですけど、客観的に見れる立場やったというか。だからこそ、榎本が『これはこっちのほうがいいと思う』って言ったら、こっちのほうが世に受け入れられやすいのかもって思ったりする場面は結構あって」

四方「作ってると結構グーッと奥のほうに入ってしまうから、『普通に考えてこうじゃない?』っていう視点は結構必要で」

吉見「そうそう。だからLINEでポッと言ってくれたことで『そっか、やっぱそうやな』ってフッと戻る瞬間がありましたね」

榎本「そういう役割やったんか。わかりました(笑)」

■『インドア』の時は、四方さんのほうから「言葉」「ビート」「アンビエンス」という3つの共有事項があったと思うんですけど、今作では何か共有したことはあったんですか?

四方「今作は何となくバイブスでわかるでしょ?と思ったので、敢えて言葉で言う必要もなく、上手いこと各々が合わせてきてくれた印象が大きいですね。今回は、前回が自分ひとりでやり過ぎたっていう実感もあったんでメンバーの意見を取り入れたいと思ってた部分は結構あったのと、前回よりも僕自身がそういう意見を取り込んで曲を作ることを楽しめるようになったのも大きかったなって」

■メンバーの皆さんは、具体的にコロナ禍で得たことが身になったなと感じる部分はどういうところだったんでしょうか?

吉見「音響アレンジで言うと“Better”なんかは、僕的にはコロナ禍で得たものが出てるかなと思っていて。コロナ禍でシンセをしっかり触ってみて、どう操作したらどうなるかっていうのがわかるまでに結構時間がかかったんですけど、それがようやくアウトプットできたなっていうのがありますね。あと、ギターで言うと“WAV”が一番遊んでますね」

榎本「ギター9本入ってるしな」

吉見「そうそう。パッと聴いたらギター2、3本かなって感じなんですけど、シュワーっていう音とか、よく聴いたらいろんな音が入ってるんですよね。そういうのはアンプの実機を触ってじゃなくて、パソコン上でいろんな遊びができるようになったのが大きくて。“WAV”はまさしくそれを活かした曲ですね。そういう意味では、この2曲はコロナ禍と密接に繋がってるなと思うし、アウトプットが上手くできた自己成長の感じられる曲かなと思います」

■“WAV”はベースも印象的だなと思って。ベースで曲のノリが生まれている感じがして、心地いい曲ですよね。

武志「これはベースから作った曲なんですよね。制作中にベースリフの曲がないみたいな話になって、じゃあベースから始まる曲を作ろうってなったんですよ。で、先に耳に残るベースライン作ろうと思って、一拍目が休符から始まるベースラインを作ったんですけど、気づいたらベースから始まる曲にはなってなかったっていう(笑)」

吉見「あれはあれでよかったんやけどな(笑)」

■古谷さんはどうですか?

古谷「“WAV”はドラムもなかなかやってこなかったビートなので気に入ってますね。あとは“Futura”かな。ちょっと癖のあるビート故に賛否両論があるかなと思いつつ、何回か考え直して、自分の中ではいいところに落とし込めたと思う曲です」

■ドラムは体を使わずにパソコンに向かってビートを作っていくとなると、これまでとは違う頭の使い方になりそうだと思ったんですけど、実際どうでした?

古谷「実はそんなに変わらないんですよね。僕、いつもパソコンの前で足を叩きながら考えることが多いんで(笑)。音色はエンジニアの人と相談して生感が出るようにとか考えながらやってたので、そこはこれまでとちょっと違うかなと思うんですけど」

吉見「“Futura”は完成まで結構苦しんだよね。これ一番しんどかったかな?」

四方「いや、“ただいま”じゃない?」

吉見「“ただいま”か!」

■“ただいま”は、最初アコースティック調で始まって、その後ギターの音色が変化していく感じが印象的だったんですけど、アルバムの中でも言葉がはっきりと聴こえてくる曲だなと思っていて。

四方「振り返ってみると、アレンジとかコード進行とかが一番すんなりいかなかった曲なんですよね」

■この曲、後半は四方さんの譜割りも面白かったり、聴くほど楽しめる曲だなと思ってました。

四方「譜割りは結構変って言われるんですよね」

武志「“Better”の譜割りとかも変やもん」

吉見「それはめちゃくちゃわかる」

武志「変というか独特。レコーディングの時にコーラスをやったんですけど、どこで言葉区切るのが全然わからんくて」

吉見「それエンジニアさんとよく言ってたな。レコーディングの時に四方が決定した歌詞を持ってくるんですけど、歌詞を見た時にどうなってんねん!?っていうのが多くて」

武志「音の数と言葉の数が合ってなくてな」

吉見「『どこが何小節で、今どこ?』ってなることが多い。で、エンジニアさんが『とりあえず録ってみよう!』って言って1回やってみて、徐々に理解していく感じ」

榎本「でもリズム独特やし、カッコいいよね」

吉見「うん、カッコいい」

武志「でも歌詞だけ見たら歌われへん(笑)」

四方「最初、英語っぽい感じで作るから母音とかが歌謡曲っぽくなくなるのはあるかな。改めるか……」

■いや、それは四方さんの個性だと思うので改める必要はないと思うんですけど――。

四方「でも歌える曲もあったほうがいいと思うんですよ。それで言うと“FIVE”とかいいんじゃないですか……?」

吉見「はははは。自信なくさんとってや(笑)」

■“FIVE”というと、年末にYouTubeで公開された「ヤジラジ」で四方さんが5月にデモを作ったという話をされていましたが、人との繋がりが途絶えた緊急事態宣言下で、ああいうバンドの関係性を歌った温かい歌が生まれたということが素敵だなと思いました。この歌はどうやってできていったんでしょうか?

四方「それこそ音楽も不要不急って言われて、いろいろ止められた時に、音楽に対する愛を改めて感じることがあったんですよね。自分は結構インドアなほうで人と会わなくても平気なんですけど、出ちゃいけないってなると、いつも関わってた人達とかのことを考えることも多くて。コロナになって将来の不安とかもあったので、バンドの夢だったりを改めて考えたりして、割と素直な気持ちでポッと出てきた歌ですね」

吉見「“FIVE”ってサウンドが単純に聴きやすいっていうことプラス、歌詞が直接的に響くんですよ。なので僕的にはアルバムの中でも特別な曲やなと思っていて」

榎本「メンバーは特にそうやな」

四方「今まで曲に展開をつけたり、声を張り上げてガーンとエモくっていう演出でパワーを出してたのがYAJICO GIRLには多かったんですけど、さらっとしてるんだけど名曲、みたいなのがあんまりなかったんですよね。そういうのをずっと作りたいなと思ってて。それがこのタイミングでできたので嬉しかったですね」

■音色も他の曲とはちょっと違って80年代の――私は山下達郎の“クリスマス・イブ”っぽさを感じたんですけど。

四方「どちらかというと、そもそもはポスト・マローンとかをリファレンスで作っていって。作ってる最中に山下達郎とか、そっちも取り入れたんですよ。だから最終のアレンジでは山下達郎っぽさもあるけど、出音の感じは今っぽく作れたのでいいバランスだと思います」

吉見「この曲は意見交わさずとも、これはこれでしょ!みたいな、ボーカルを邪魔せずにシンプルなループで組んで間奏のフレーズもシンプルにして、とにかくボーカル!って感じでしました。だからギターだと、歌ってる最中に単音を弾いたりはせずにバッキングだけで、歌を聴いてもらうってことに全力を注ぎました」

武志「ベースもルートしかやってなくて。おかずもかなり少ないんですよね。<僕ら何度 戸惑って>の手前にちょっとあるくらいで、他は全然なくて。ほんとにボーカルの邪魔をしないようにシンプルにしてますね」

古谷「ドラムもほぼほぼ一緒で、たまにちょっとおかず入れるくらいで」

四方「でもそのちょっとって大事やなと思ってて。僕のデモ段階ではずっとループやったんで、サビの手前の部分とか、新しく作ってもらったところは気にいってるし、そういうのがバンドやってていいところやなと思います」

■それから今回は曲の要所要所でコーラスが効いてる曲が多いなという印象があって。中でも“Better”の終わり方には圧倒されました。 “Better”はどうやってできていったんですか?

四方「この曲は……どんな感じでアレンジしたっけ?」

吉見「えっと、この曲は初めに<ちょっと待って>の1節があって、とりあえずフル尺を作ってシンセのループも作って、一旦バンドでは満足してたんですよ。で、その後、アレンジャーさんとのやり取りの中で、僕ら的に譲れない部分と、向こうも長年培ったもの的に譲れないものがあったりして、お互いにいいポイントを探り合いながらやっていきました。でも、最終的にいい形になったなと思ってて。そのアレンジャーさんがいなかったらこの感じにはなってないなと思います」

■アレンジャーさんは『インドア』とはまた別の人なんですね。

吉見「そうなんですよ。“街の中で”“セゾン”までは今までの方だったんですけど、“WAV”から他8曲はTejeさんっていう新しいアレンジャーさんと一緒にやっていって。その人が僕らのやりたいことを理解してくれて、めちゃくちゃスムーズでしたね。こういう音入れたいとか、こういうふうにしたいっていう。初めてTejeさんとやった時に、武志が個人LINE送ってくるくらいめちゃくちゃよかったですね」

榎本「武志がそんなことするのってマジでないよな(笑)」

武志「なんか今っぽい音響というか、SEっぽい音で遊ぶみたいなところが完成した時に、自分達では絶対できないけど、そういう音が欲しかったっていうのを鳴らしてくれて、あ、この人と一緒にやったらいい感じになるなって思ったんですよ」

吉見「自分達的にもめちゃくちゃ勉強になるしな。こういうアンサンブルでやったらいいんやとか、凄くいい関係を築けてた気はします。いいコレクティヴになってるなと思いましたね」

榎本「ヤジラジの時もそうやけど、めっちゃ『コレクティブ』って言いたがるよな(笑)」

吉見「繰り返して言うことが大事。いろんなところで言ってったら浸透するから」

榎本「うん。俺、吉見のそういうところいいと思うで」

■『インドア』の時から掲げてる「Indoor Newtown Collective」っていうバンドの指針のことですよね。『アウトドア』でまた広がったんですね。

榎本「そうですね。これからもコレクティブは広げていきたいと思ってます」

■アレンジャーさんとのコミュニケーションもそうですけど、『インドア』で築いたものの理解度が高いからこそ、『アウトドア』の制作が実りあるものになっているんだなとお話聞いてて思いました。

吉見「ほんとにそうですね。『インドア』は凄くいいものを作ってたんだなって今回の制作で強く思いましたね。コロナ禍でいろいろ考えて、自分がギタリストとしてバンドで何ができるかっていうのを見つめ直すことができたので、そこで『インドア』の理解度が格段に上がったっていう実感があって。『インドア』はいつ振り返っても、この時にこういう音楽を聴き始めたなとか、今まで聴いてなかった音楽聴き出したなとか、いろんなところに戻っていけるなと思って、自分を見失わない核になってるなと思います」

榎本「帰ってこれる場所やな」

吉見「で、四方が『インドア』でリファレンスにした音楽も面白いことやってるなって思えるようになったし、そこから派生していろんな音を聴けるし、『インドア』なしにはここまで聴く音の幅は広がってなかったんで、凄いよかった。そもそもイメージできる音像っていうものすら頭になかったんで」

榎本「『インドア』の時は『え、無理。わからん、わからん!』って感じやったもんな。でも、今やったらわかるようになったというか」

吉見「うん。今は逆に好きってなってるし、そういう意味でも僕らにとって『インドア』はめちゃくちゃ価値のある作品で、それがあって『アウトドア』ができたっていうね」

四方「いや、『インドア』はだいぶ凄いよ。バンドやけど、俺がひとりで突っ切ってっていう作品もなかなかないと思うし。だから、いい意味でも悪い意味でも不自然な部分が多くて、その違和感みたいなのが他のどの音楽聴いてもないアルバムになってて、それが面白いって俺はめちゃくちゃ思ってんねん!」

榎本「全員が全員、『はい、これな』って思いながら作ったらそんなことならへんしな。そもそも高校からこのメンバーでやってるから、このメンバーでやるのは前提になってて、その中でどうするかっていうのが『インドア』を普通とは違う感じにしたんかな。で、それが今の土台になってるっていうのも面白い」

■リリースから1年半経って『インドア』の功績を感じられるというのは、『アウトドア』がしっかりとメンバーで作り上げられた実感があるからなのかなとも思いました。

武志「そうかもしれないですね。僕らは長いこと一緒にバンドやってて、『インドア』と『アウトドア』を作って、よりお互いの役割みたいなのがより明確になった感じがあって。何も言わずとも空間を作れるのは強みやなと思いました」

吉見「そやな。『アウトドア』を作って、ようやくメンバー全員の気持ち的にも前向きに開いてきたと思うので、これからは5人で音楽をやってる意味を外向きに発信していけるような活動がしていけたらいいなと思いますね」

榎本「でもさ、『インドア』、『アウトドア』の次がムズいよな。どういう方向性でいくのか。ビジョンはあるんですか?」

四方「…………ビジョンは、ある」

吉見・榎本・武志・古谷「おぉ~」

榎本「メンバー初耳(笑)」

武志「マジで初耳やわ」

四方「まだ言語化までいけてないから言えないんですけど、今回新しいアレンジャーさんと一緒にやったとかもそうですけど、今後5人以外の誰かと一緒にやっていくのも面白いと思うし、これからもいろんなことに挑戦していきたいと思ってます。次も楽しみにしておいてください」

Interview / Text : 桂 季永 (MUSICA)

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